【中山大ブログ】 鷹の韋駄天が時を止めた!周東佑京、執念の「母の日」単独ホームスチールを振り返る
2026年5月10日、みずほPayPayドーム。
「母の日」という特別な1日に、私たちは野球の歴史に刻まれる“事件”を目撃しました。主役はやはり、この男。福岡ソフトバンクホークスのスピードスター、周東佑京。
3回裏、2死三塁。自身が放った適時三塁打で1点差に詰め寄り、球場のボルテージは最高潮に達していました。マウンドにはロッテの若き左腕、毛利。打席には怪物・柳田。誰もが「ギータの一振りで同点か」と息を呑んだ、その初球でした。毛利が右足を高く上げ、本塁へ向けて始動したその瞬間。三塁走者の周東が、爆発的な加速でホームへ牙をむいたのです。
「あ、行った!」
実況が叫ぶよりも早く、周東はすでに走路の半分を駆け抜けていました。慌ててバックホームする毛利。必死にミットを構える捕手の松川。球場全体が「えっ、まさか!?」という驚きと期待で、一瞬だけ静止したかのような錯覚に陥ります。
周東は迷わず、頭から本塁へ突っ込みました。舞い上がる砂埃。交錯する腕と足。
「アウト!!」
球審が右拳を突き上げた瞬間、ドームは溜め息に包まれました。タイミングは完全にアウト。しかし、周東は確信に満ちた表情で立ち上がり、審判へ、そしてベンチへ指を差します。
リプレイ検証の映像がビジョンに映し出されると、ドームが地鳴りのような歓声に変わりました。松川のミットが周東に触れたその刹那、衝撃でボールがこぼれ落ちていたのです。
「判定を変更します。セーフ!」
プロ入り初となる、衝撃の単独ホームスチール。通算237個目の盗塁は、足の速さだけでなく、相手の隙を突く洞察力と、泥臭く本塁を奪いに行く執念がもぎ取った1点でした。
試合後、ピンクのリストバンドを揺らしてお立ち台に上がった周東の目は、少し潤んでいるように見えました。
「お母さん、お願いします。力を貸してください……と、心の中で呟いていました」
2024年に天国へと旅立った最愛の母へ捧げた、魂の激走。この奇襲で息を吹き返したチームは、勢いそのままに8-3で逆転勝利を飾りました。
これだから野球観戦はやめられません。私たちは、ただの「1点」ではなく、一人の男の人生と誇りが詰まった「伝説の走塁」を見たのです。
テキスト : 中山 大→プロフィール





